アフリカ系の男性

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わたしが高校生のころ、市内にある学習塾へ電車で通っていた時のことです。
ある日、同じ車両に乗り合わせたのが、「アフリカ系の男性」でした。当時の私は全く英会話ができなかったため、とりあえずこのまま関わることなく、駅に着くことを望んでいましたが、声をかけられてしまいました。
彼の名前はボブと言い、来日してまだ間もないということくらいだけ理解できました。
ボブは日本語を聞き取ることはできるようだったので、私はずっと日本語で話し、ボブはそれを理解したのかしないのか分からないですが、返事を英語で返してきました。

高校生の私に話しかけるアフリカ系の男性という奇妙の構図に周りにいる人たちは、私たちから離れていきました。何人かは車両を代えてしまい、私の周りから日本人が減っていきました。
よく分からない自己紹介が終わったところで、私に話しかけた要件は何かと、ボブに尋ねました。要件は、「乗換えが分からない。」ということでした。

ボブに行先を聞いたところ、このまま乗っていれば着くところだったので、その旨を伝えました。
そうすると、おそらく日本語で「ありがとう、君はなんて優しいんだ。」というような内容のことを車両に響き渡るような声で言われました。
その瞬間、他の乗客に大声で話さないでよというような冷たい視線を送られました。ボブとこんな会話をしている間に乗客は入れ替わっており、私とボブの会話を途中から聞いた人は、私とボブが知り合いだという認識をしていたようです。
しかし、ボブは大きな声で続けました。「サンキュー、マイエンジェル!」と。あまりに恥ずかしくどうしていいかも分かりませんでした。
他の乗客からは、ボブとセットで迷惑な人たちとして認識されてしまっているが、ボブとは初対面という私の中のジレンマを抱えながら、日本人の私がボブに向けらている冷たい視線を感じることになりました。

そんなこんなで、ボブが先に目的の駅に着きました。ボブは降車するときも相変わらず「サンキュー、マイエンジェル!グッバイ、アイミスユー!」と叫びながら高揚したまま、私の前から去っていきました。

きっと、鳴れない日本で電車に乗ったのでしょう。誰かに道を尋ねたいけれど、なかなか相手にしてくれる人がいない中、英語の参考書を片手に電車に乗っていた私を「エンジェル」だと確信したのでしょう。

この子なら!と思ったのでしょう。今ではそんな解釈をしています。しかし、ボブのほうが先に電車を降りてしまったので、残された私はその何とも言えない恥ずかしさを持ったまま、終点を迎えました。